正直、内田樹の主張は同意できないことも多いが(笑)、このやりとりは重要だ。株式会社のビジネスモデルと、「農業」「協同組合」のビジネスモデルは異なっている。そしてその結果、ビジネスモデルから立ち上がる意味が異なっているのである。
小松 ということは、新自由主義一辺倒の政策ビジョンで株式会社をビジネスモデルとした制度設計に対して、「農業」も「協同組合」も適合できません。この二重の不適合から反動勢力に位置づけられ、農業協同組合は解体含みの改革を迫られているわけですね。
内田 そうです。だから、農業とは何か、協同組合とは何か、どうあるべきかという原理原則をあきらかにして、それに基づいて、現政権の農業政策を批判してゆかなければならない。農業協同組合は農村地域や農業の最後の防波堤であるべきです。その歴史的使命を果たすためにも、冒頭で指摘した自己点検、さらには自己審判に早急に着手すべきです。
ビジネスモデルという構造からどのような意味が立ち上がってくるのか。意味という〈現象〉をこそ問う必要がある。そしてこれは、もちろんJAに限らない。あらゆる企業に突きつけられている問いなのである。
JAだけでなく、あらゆる企業はいつしか、組織の存続そのものが目的になっていく。中小企業診断士の試験で、企業の目的を「ゴーイングコンサーン(継続企業)」と覚えたときの違和感を思い出す。
企業が「あって当たり前」のはずがない。企業は、常に自身が存在している意味を問い続けなければならない。