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ビジネスモデル・イノベーションには、均衡を打ち壊すものとしての「新結合」が必要である

 シュンペーターは、「新結合」という言葉をのちに「イノベーション」という言葉に置き換えた。「イノベーションとは何か」と問われたとき、「新結合」と答えるのは、このシュンペーターの記述があるがゆえだ。ただ、「新結合」ばかりが注目されて、なんのために新結合が必要だとシュンペーターが考えたのかは広く知られていない。(何でもつなぎ合わせればいいと勘違いしている。)

 シュンペーターはワルラスの一般均衡理論を「静態的過程にのみ適応できるに過ぎない」と考えた。そこで、資本主義経済を動態的に分析するにはどうしたらいいのかという理論を追求することになった。そこでは、まずは均衡を崩す必要がある。そのエネルギーの源泉として「新結合」を捉えた。

 新結合とは、静態的な均衡状態の中で使われている生産手段、資源、労働力などを新しい目的へと転用していくことを指していたが、均衡状態を打ち破るものとして構想された概念なのである。 

シュンペーター (講談社学術文庫)

シュンペーター (講談社学術文庫)

 

 新結合というときに、間違いを犯しやすいふたつの間違いがある。 ひとつは、結合させるときに、既存の目的の範囲の中でつなぎ合わせてしまうという間違いである。それでは「新結合」とは呼べない。新しい目的のもと、組み合わせる必要がある。

 もうひとつの間違いは(ひとつめと関連するが)、すでにある均衡を強化するかたちで結合を行うことである。シュンペーターは、創造的破壊と呼べるような、既存の均衡を打ちこわし、撹乱させるようなものを想定していた。イノベーションのプロセスが、必然的に既存の常識にはとらわれない、破壊的なものになるのは当然だろう。

 シュンペーターにとって「企業家」は、新結合により静態的経済の世界の秩序を壊す者であり、静態的経済の軌道のまま企業経営する者は「単なる経営管理者」であった。

 Amazonはオンライン書店として出発し、その商品ラインナップを拡充していった。そのときに使っていた膨大なサーバ資産を、Amazon Web Services(AWS)としてクラウドコンピューティングサービスとして新結合させた。世界中の、とくにサイバーマンデーなどの膨大なトラフィックを捌き切るAmazonのクラウド資産を使ったこのサービスは、費用対効果の点において、他の追随を許さないものとなった。

 こうした新結合が、人口動態や自然災害等の外部の要因ではなく、あくまで資本主義内部での内発的な動きとして起こってくることに、シュンペーターは注目をした。外部環境への単なる対応ではなく、外部環境がそれほど変化していない状況であっても、こうした展開が起こりうる。

 その意味で、ダーウィンの適者生存だけでは不十分だ。それであれば外部環境が変わらない限り「進化」もなかったはずだが、加速度的に進展を遂げていったのは、資本主義経済内部からの内的エネルギーがあったと考えたほうがよい。

 ビジネスモデル・イノベーションにおいても、同様である。外部環境への対応などではなく、その企業の中から、資源の新結合を生み出していくような仕組みが必要なのである。そのときに、既存の枠組みに思考が囚われていては、新しい結合などは起こりようがない。

 シュンペーターのいう「企業家」には、既存の枠組みにとらわれない発想と、均衡を打ち壊す勇気が必要なのである。