人材不足による物流費の上昇は、出版業界にも大きな影響を与えている。2017年12月にトーハンが出版物の配送費を出版社に「転嫁」する交渉を行い、講談社が合意。それを見て日販も交渉を始めたという。この背景には、日通の出版物配送からの撤退があった。
出版物の配送量は、紙の本が売れなくなって右肩下がりになる一方で、出版物の主要な販売チャネルであるコンビニは増え続けた。結果、量は減るのに配送先が増えるというコスト増の悪循環に陥った。いよいよ物流会社が耐えられなくなった。
大量販売モデルからジャストインタイムの個別配送モデルへ
これでようやく出版業界の構造改革にも手が加えられるのだろうけれど、もはや手遅れかもしれない。これまでのような大量の出版物を、取次が取りまとめて配送する時代から、ジャストインタイムでの配送となっていくのだろう。
記事の中ではKADOKAWAの取り組みが紹介されている。自社印刷することによって、需要に合わせて柔軟な印刷が可能となる。必要な本を必要な場所に届けられるので、返本も減らすことができる。配送料は当然上昇するが、返本コストを減らすことである程度相殺できるかもしれない。
新刊本頼りのビジネスモデルからの脱却
もっと重要なのは、今までのように本を「押し込」んで前払い金で受け取るような仕組みでなくなるということだろう。返本に対する返金に対処するために、とにかく新刊本を出し続けるような「麻薬」のような仕組みから脱却することになる。
取次は、パターン配本という書籍の配本コントロール権を握っているが、その部分も自分たちの管理下における。これはもちろん、書店営業を強化しなければ置いてもらえないリスクを引き受けることにもなる。
KADOKAWAの取り組みは、いままで享受していたメリットを手放し、さらにリスクを引き受けるものだ。ただこれは、アパレルがSPA業態(製造から小売までを垂直統合する業態)に移行したように、時代の流れのように見える。また一方で、CCCが出版社を買収する流れは、小売がプライベートブランド展開する流れに似ているのかもしれない。
いずれにしても、大幅なビジネスモデル転換が迫られている。