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国際社会で生き残れる人材をどう育てる?|教育イノベーションイニシアティブ

2018年9月2日に、教育イノベーションイニシアティブ第1回「グローバルの視点からこれからの人財要件を考える」と題して実施された。

まず、元世界銀行資源動員副総裁であり現株式会社オープンシティ研究所代表取締役所長である日下部元雄氏が「国際社会で生き残れる人材をどう育てる?」という講演を行った。

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日米金融摩擦への対応における急進主義と漸進主義の対立

政策研究大学院大学の教育で使っていた自身の10のケースから3つを紹介した。最初のケースが「日米金融摩擦への対応」であった。1985年のプラザ合意の翌年、財務官室長に就任し、大蔵大臣・財務官を補佐した。そこでは円高の是正が課題となり、日米為替交渉のお膳立てを行った。

その後、銀行局金融市場室長に就任した際には、米国から即時の預金金利の自由化を要求してきた。それに対抗し3年間で自由化を主張した。米国の急進主義と日本の漸進主義の対立があった。

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不良債権問題にあった原則主義と協調主義の対立

2つ目が、不良債権問題への対応であった。1991年、欧州開発銀行へ出向し、中央アジア諸国での不良債権問題に直面した。不良債権があると欧州開発銀行からの融資ができないため、不良資産の解消から始める必要があった。欧州の会計士を雇い、不良債権処理の訓練をバンカー100人に施し、合格した銀行に融資するスキームを確立し、融資額トップを達成した。

その後、1994年に日本に戻り銀行局担当参事官に就任し、日本の不良債権処理に対応することになった。欧州開発銀行での経験を活かし、国際標準に従ったスキームを創った。ここでは原則に基づく改革をするのか、協調主義で行くのかという対立があった。

1997年には世界銀行にいくと小ネオはアジア経済危機が起こり、日本での経験を踏まえた不良債権を銀行から切り離し償却する処理期間(AMC)案を作成して評価され、体・インドネシアなど5カ国の経済危機収拾に成功した。1999年には副総裁に就任する。さらに中国に呼ばれ、国立銀行4行の不良債権問題に対して処理機構を検討した。

2012年には住専処理機構での不良債権の法的処理が、追加予算なしに完了した。

創造的産業創出への取り組み

1999年に世界銀行「資源動員担当」の副総裁として、草の根からの”エンパワメント”を目指し、融資機関から学ぶ機関に生まれ変わらせる取り組みを行った。途上国で貧困問題に取り組むNPO20団体を呼んでのシンポジウムでは、資金融資よりも、世界の情報へのアクセスを確保し、さらに情報発信をしたいという要望があることがわかり、途上国でのIT産業育成事業に取り組んだ。

2003年にはスタンフォード大学で客員教授として、シリコンバレーでの破壊的イノベーションを目の当たりにした。2004年には欧州開発銀行の総裁特別顧問として再度勤務。国ごとに異なる情報化戦略を14カ国で取り組んだ。2004年から2014年には、世界銀行が理想とした課題解決型学習のAction Learning、解決能力を身につけるCompetence Learning、協力により学習するGroup Learningの3つの要素を合わせた課題探究型授業を実施した。

海外と日本の人材の意識比較

海外と日本では人材の意識が異なる。海外では急進主義でマーケット重視、ルール・原則重視である。漸進的イノベーションには不向きである。一方日本では漸進主義で協調を重視する。漸進的イノベーションに強みを発揮し、1980年代には圧倒的な優位性を確立した。

一方、海外では自分の意見を持ち、仕事を自分で作り出そうとする。仲間からの敬意を得る競争意識が高い。日本は仕事を自分ごととするオーナーシップに欠け、上司からの指示待ちになりがちである。1990年代以降の情報産業での破壊的イノベーション、オープンインイノベーションの領域で、日本は優位性を失った。

若者の実態調査からわかった教育課題

2011年から日・英の三都市で若者の実態調査を行った。ロンドンでは無職の若者の暴動が勃発していた。一方日本では東日本大震災が起こり、被災者の生前とした対応が注目された。しかし自殺者は3万人以上に登り、いじめ・不登校・ひきこもり・子供の貧困問題が起こっていた。なにが真実なのだろうか。

社会疫学手法の考え方に基づく調査では、「親との接触が少ない」子がいる場合、どのような経路を経て「貧困」につながるのかを調査した。多くの連鎖が「人生無意味」へとつながり、その結果、「若年無業者」、「失業」、さらに「貧困」へとつながっていったことがわかった。

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また、仲間遊び苦手の割合が急上昇しており、その結果が授業理解困難、不登校、いじめられた、若年無業者というリスクに波及していことがわかった。仲間遊びが苦手となる最大の原因は、親のストレス・不安にあることもわかった。

「親教育熱心」の場合、子供の「自己肯定感」「主体性」を損なうのではないかという調査を行った。「親教育熱心」の家庭の子供は「仲間遊び苦手」を減らし、「授業理解困難」や「不登校」を減らす。また、「大学卒」「専門資格」の取得にもつながっている。

一方、就労期のリスクは逆に高まる。若年無業者や非正規雇用、失業はかえって増える。「親教育熱心」は「親からの承認」が最大の動機づけとなってしまい、自己肯定感・主体性が低下してしまうのである。就職氷河期以降は「やる気」や創造性が求められる中で、就業リスクは高まるのだ。

教育改革への提言

制度だけでなく意識を変える必要がある。企業の意識が変わることで親の意識が変わる、そして本人の意識も変わる。そのなかで、生涯発達の視点で取り組む必要であり、そこでは内発的動機づけの視点が欠かせない。

三層にわけたとき、本来の能力が発揮できていない層には、子供と親の愛着関係の構築をし、そこで子供の内発的動機づけのある分野を探すことが重要である。中堅人材には、デザイン思考に基づく多様な役割で支える想像力とやる気のある人材を育成することが重要になる。ロールモデルとなる層には、国際的に連携できる人材を育てることが重要となるだろう。

こうしたことを考えていくとき、日本国内で留学生を受け入れが進んだグローバル大学にオープン・イノベーション・ハブになってもらい、課題探究型のグループ学習のプログラムを提供し、チームメンバーとして活躍する体験をしてもらうことが重要だろう。

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文責:小山龍介