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映画定額のビジネスモデルは映画業界の活性化につながるか

アメリカでは失敗したといわれている映画定額を、日本で導入しようとする動きがあるという。

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アメリカでの失敗は、ひとつには価格設定にある。

 「なぜMoviePassが赤字になってしまうのか?」という問いに答えるのは簡単です。MoviePassの月額料金が9ドル95セントであるのに対し、アメリカの映画館における平均的な映画料金は9ドル16セント(約1090円)。MoviePassでは、ユーザーの映画料金を肩代わりする形でそのまま映画館に支払っています。

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映画定額の適正価格はいくらか?

上の記事にもあるように、赤字でもいいのでまずは多くのユーザーを集めたうえで、映画館への交渉力をつけていこうという目論見だったが、映画館は値下げ交渉に応じなかったようだ。応じたとしても、一本分の価格では収益化するのは難しそうだ。

この価格をもう少し高めに設定することは可能だろう。たとえばNetflixが月額1200円(2018年10月より)という設定にしているが、レンタルビデオを400円と考えれば、3回分と捉えることができる。一般的なレンタルビデオユーザーからすると、月に三本分の価格で、オンデマンドでいつでも見られるという価値に見合っているのだろう。

映画とレンタルビデオを単純比較できないが、感覚的には、月額2980円で見放題というあたりが落とし所なのかな、と思ったりもする。月に2本見ればペイするとなれば、お得感はかなりある。同時期に、2本くらいは見たい映画はあるものだ。(個人的感覚)

映画業界へのプラスの効果

 

こうした価格戦略に影響を与えるのが、こうしたサービスが映画業界全体にどのようなプラスの効果をもたらすか、ということだろう。

アメリカなどでは10ドル以下で見られるのに対し、日本の映画は高止まりしている。慣習としての高価格を維持しながら、下げた時により多くの映画を見てもらえるのかという価格弾力性を試してみるのにもいいのではないだろうか。

また、ゆるやかながらネットワーク効果も期待できるだろう。友人の多くが定額にはいっていたとき、ひとりだけ通常の料金を払って見ていたのでは、友達づきあいもできないだろう。

一方で、ヒット映画であればふつうに1800円払ってもらえているというメリットを手放すのには、かなりの勇気が必要だろう。1800円払ってもらえるものを、みすみす見放題で見られてしまってはもったいない。ヒット作でのマイナスを、それ以外の作品での観客増によってカバーできるかという計算になるのだろう。

○○放題のコスト管理問題

上述した2980円で利益を残すには、たとえば1本800円くらいで交渉を成立させたとして(この数字は勝手な想定)、3本でなんとか580円残る。4本見られてしまうと、220円の赤字になる。フィットネスサービスのように、一定の休眠会員(会費を払いながら、それほど行かない人)がいて成立するのだろう。

すでにMoviePassでも制約をかけているように、同じ映画は二回見ることができないようにしておくことは重要だろう。ファンは、同じ映画にこそ、何度も足を運ぶ。

また、休憩の場所として使われてしまうような想定もしておく必要があるだろう。まっくらになり、空調もきいた映画館は、眠るのにもぴったりだ。タスコフスキー作品など、質の高い睡眠空間を提供してくれるだろう。